愛を込めて極北

 「楠木さん、起きてください。風邪ひきますよ」


 外出中だったため、暖房は切られたまま。


 真冬だったら暖房は入れた状態で外出するのだけど、春が近づき昼間は暖房を切っている。


 おかげで家の中はかなり冷え切っている。


 「こんなところで寝たら、寒いじゃないですか」


 かなり激しく揺さぶったところ、


 「……極北の寒さに比べたら全然だ」


 意識が戻ったようで反応があったが、目は閉じたままだった。


 「ここは日本です! 日本には北極と違って、風邪というものが存在するんですよ!」


 聞くところによると、北極地方は寒すぎて風邪のウイルスすら生きていられないとか。


 しかし日本ではそうはいかない。


 たちまちウイルスの餌食となるだろう。


 周りに毛布の代わりになるようなものはないため、どこかから持ってこようかと思った。


 「……出発前に風邪でダウンしたら、スポンサーに怒られちゃいますよ」


 何気ない私のそんな一言がきっかけで。


 楠木は目を覚ました。