愛を込めて極北

 「楠木さん、着きましたよ」


 楠木の自宅兼事務所前に到着するも、後部座席からはうんともすんとも動きがない。


 「楠木さーん」


 ちょっと声を大きくして振り返ると、後部座席に崩れ落ちた状態で寝込んでしまっていた。


 「楠木さん!」


 運転席から手を伸ばし、揺り動かしても反応なし。


 「困りましたね……」


 仕方ないのでシートベルトを外し、車を降りて後ろへと回り込んで、楠木に近いほうのドアを開けた。


 「く・す・の・き・さ・ん!」


 ドアから体を突っ込んで、かなり強引に楠木を揺さぶった。


 「ここ……?」


 「着きましたよ! 家の前ですよ!」


 「あれ……? いつの間に?」


 楠木は手で頭を押さえながら起き上がったものの、


 「危ない!」


 車を降りた途端、足がふらついたのか尻もちをついてへたり込んだ。


 「飲み過ぎですよ。荷物は私が持ちますから、家に入りましょう」


 放っておいてそのまま私だけ帰宅したら、ここで寝てしまいかねない勢いだったため、家の中まで連れて行くことにした。


 朝晩は暖房が欠かせないこの季節、外で寝てしまったら凍死してしまうかもしれない。