「救う……んですか? 響さんが楠木さんを?」


 再び国道を走り出した。


 「そう。でも気持ちを打ち明けることができなかった。私のほうが年上ってこともあり、今の関係を壊したくないっていうのもあったし」


 「なのにどうして」


 響さんには婚約者がいて、六月には挙式だって言ってた。


 楠木に対するほのかな想いがあったにもかかわらず、どうして……?


 「私には荷が重すぎたんだよね、結局。楠木さんを支えようとすればするほど、自分の無力さに打ちのめされて」


 「重荷? それは楠木さんの生き方がクレイジーだからですか?」


 楠木の世界観を理解しようとしたものの、あまりにものめり込み過ぎているその生き方について行けなくなったのかな? と予想した。


 「いや、そういうわけではないんだけど……。好きでい続けることにいつしか疲れちゃってね。それで別の男性に癒しを求めたのかも」


 「癒し……。楠木さんに癒しって言葉は、まさに正反対なイメージですよね」


 細かい事情は不明なことが多かったけれど、響さんの気持ちは何となく理解できた。