愛を込めて極北

 「なぜ……」


 蟻地獄だとか救いがないだとか、響さんが楠木の現状をそう評する理由が分からなかった。


 極北への旅……彼のライフワークに関心を持ち共感を持つからこそ、事務所でお手伝いをしている響さんが、楠木の旅のことを悪く言ってるとは思えない。


 だとしたら……?


 「美花ちゃんだから……、今だから告白するけど。以前は私が、楠木さんを救いたいって密かに願っていたんだよね」


 「えっ!?」


 予期せぬ告白に、私は思わず急ブレーキを踏んでしまった。


 前後に車がいなかったのが幸い。


 「美花ちゃん……。そんなに驚かなくても。事故っちゃう」


 響さんは苦笑しているけれど。


 私は驚きを隠せない。


 (響さんが……、楠木を?)


 にわかには信じられない。


 「本とかを読んで楠木さんの活動に興味を持って、事務所でお手伝いをするようになって、近くで接しているうちにあれこれ分かってきて……。できることなら私が楠木さんを救ってあげたいと願ったこともあった」