愛を込めて極北

 「よく分からないですが、支援してもらうのも大変ですよね。企業側もよっぽどのメリットがないとわざわざそこまで」


 「だからその代償に、楠木さんは、」


 そこまで言いかけて、響さんは急に話をやめて、


 「そうそう。資金を得るために、楠木さんはこんな活動もしてるんだよ」


 ちょうど赤信号で停車した際、響さんはバッグの中からカタログを取り出した。


 「リブラン、冬の新製品……」


 大手アウトドア用品メーカーで、楠木の最大スポンサーであるリブラン社の、昨冬の新製品カタログ。


 新発売のウォーマーやウィンドブレーカーを身に着けた楠木が、モデルのようなことをしている。


 「モデル活動もしてるんですね」


 「下手にプロのモデルを呼ぶより、こちらはアウトドアのスペシャリストだから。製品がしっくり馴染むんだよね」


 実際にリブラン社の製品を身にまとい、極北の地を旅したり写真を撮ったりしている楠木のショットが何ページにもわたって掲載されている。


 「資金提供の代わりに、こうやってリブラン社製品を着用してカタログにてモデルもやってるってことなんですね」


 「そう……。主には、ね」


 他にも何か条件があるのかなと思ったけれど、程なく信号が青へと変わり、話題も次のものへ移行してしまった。