「流氷が九月に押し寄せるとはびっくりですね。北海道のオホーツク海沿岸は、年明け一月どころか二月になってようやく接岸が確認できるって感じですよね」
「近年は地球温暖化のため、毎年夏になったら必ず海がひらけるようになりましたが、かつては短い夏の間も氷が残っていることもありました。このキングウィリアム島の沖合約25キロくらいの地点で、1840年代にイギリスのフランクリン隊というのが一年半以上氷に閉じ込められ……」
「フランクリン?」
「あ、日本ではあまり馴染みがないですよね。1845年にイギリスを出発し、グリーンランド経由でカナダ北部と北極諸島の間を通り抜け、太平洋へと抜けるルートを確立しようと計画されていたのですが、途中のキングウィリアム島沖で氷に閉じ込められ、一年半後に船を放棄せざるを得なくなり」
「アメリカのSF小説家、ダン・シモンズの長編小説『ザ・テラー』で取り扱われていましたよね」
「それですそれ! 読まれたのですか? あんな超・長編小説を!」
彼は「同志」が見つかって嬉しかったのか、ますますマニアックな話を投げかけてきた。
「近年は地球温暖化のため、毎年夏になったら必ず海がひらけるようになりましたが、かつては短い夏の間も氷が残っていることもありました。このキングウィリアム島の沖合約25キロくらいの地点で、1840年代にイギリスのフランクリン隊というのが一年半以上氷に閉じ込められ……」
「フランクリン?」
「あ、日本ではあまり馴染みがないですよね。1845年にイギリスを出発し、グリーンランド経由でカナダ北部と北極諸島の間を通り抜け、太平洋へと抜けるルートを確立しようと計画されていたのですが、途中のキングウィリアム島沖で氷に閉じ込められ、一年半後に船を放棄せざるを得なくなり」
「アメリカのSF小説家、ダン・シモンズの長編小説『ザ・テラー』で取り扱われていましたよね」
「それですそれ! 読まれたのですか? あんな超・長編小説を!」
彼は「同志」が見つかって嬉しかったのか、ますますマニアックな話を投げかけてきた。



