……ここは、極北旅行家・楠木暁の自宅兼オフィス。


 二世帯住宅みたいな造りになっており、右半分が自宅で、左半分がオフィス。


 本人は留守が多いため、サポートメンバーが交替で出入りして留守番をすることになっていた。


 頻繁にメールやファックスが送り付けられるため、重要性のあるものはまとめておく。


 そして宅配便もよく届く。


 極地研究のため本人が注文した本やアイテム。


 現地の天気図や流氷の位置図なども絶え間なく送られてきた。


 「こっちは冬もあとわずかなのに、向こうはいつまでも冬みたいですね」


 二月も半ばを過ぎ、北海道はまだまだ寒いものの少しずつ昼間の時間が長くなってきて。


 少しだけ春が近づいてきていることを確実に感じられる。


 しかし現地の天候は、依然として毎日雪とブリザード。


 気温もマイナス30度前後を推移していて……永遠に冬が続くよう。


 「キングウィリアム島もそろそろ、極夜(極地にて一日中太陽が昇らず、夜が続く状態)が終わった頃かも。と思いきやもうちょっとしたら今度は、白夜(同、一日中太陽が出ている状態)が始まるんだけどね」


 一日中夜なのも嫌だけど、一日中太陽が沈まないのもどうも落ち着かなさそう。


 やはり日本にいたほうが、一年365日にメリハリがあるように思えた。