愛を込めて極北

 「今回は急な申し出、快諾してくれて本当に助かりました」


 参加者に順番に話しかけ続け、やがて私の順番となり。


 楠木は私の隣に腰かけた。


 「どういたしまして……。どうせ暇でしたし、それに」


 タダだったし、と口走りそうになり口を閉じた。


 急なお願いということで参加費が免除されたことは、他の参加者に内緒だからだ。


 「急なキャンセルがあって、男女比がアンバランスになってほんと困ってました。欠員補充が必要とはいえ、イベントの性質上誰でもいいってわけにもいかないですしね」


 ある程度好奇心があって、楠木の活動に予備知識がある人じゃないと参加しても回りについて行けないだろう。


 それよりこの寒さに耐えられる人でなければ……。


 「カナダ北極圏を旅する際も、こうやってバーベキューとかするんですか」


 せっかくだから何か話しかけようと思ったものの、これくらいしか思いつかなかった。


 「残念ながらここまで具材の揃った焼肉は無理ですね。現地ではあまり食べ物も揃わないし、第一高いし」


 「え? 食べ物がない?」


 「向こうは輸送経路も限られてるから陸の孤島化し、あまり物資が豊富じゃないんですよ。物価は日本の倍くらいですし」


 「えっ、倍?」