愛を込めて極北

 「じゃ、食べましょう」


 当時を過ぎてもう一か月ちょっとになるものの、未だ北国の日の入りは早く。


 バーベキューの準備をしているうちに太陽は山並みの下へと沈んでしまい、西の空はぼんやりと残照が残っているだけになっていた。


 コテージのテラス部分で、夜のとばりに包まれつつある湖を見おろしながらバーベキュー。


 夏ならば涼しげな夜風を感じながらのお肉になるだろうけど、今は真冬。


 幸いにして風がほとんど吹いていないものの……寒い。


 バーベキューはだいたい夏に行うものなので、氷点下の屋外開催は人生初体験。


 スキー場にでも出かける時くらいに着込んで、防寒対策はしっかりとしていても、隙間から冷たい風が入り込んでくる。


 とにかくしっかり食べて温まりたい。


 お肉や野菜を休まず焼きながら、焼き上がったものはさっさと食べてしまう。


 すぐに食べてしまわないと冷えてしまうし、そればかりか凍ってしまいそう。


 バーベキュー台を数台近づけて、約20人が飲食を楽しむ。


 主催者の楠木はあちこちの台を行き来して、まめに参加者に話しかけている。