愛を込めて極北

 「現在みたいに携帯電話どころか無線すらない時代。失踪地点周辺とも連絡を取りようはなく、フランクリン隊の行方はその後何年も杳として知れませんでした」


 グリーンランドの中継地から旅立って以来、二艘の船の行く先は全く分からなかった。


 どのルートをたどってどこまでたどり着いたのか情報がなかったため、たくさんの捜索隊が派遣されても行方は掴めないまま年月ばかりが過ぎ去っていった。


 「それでも度重なる捜査の結果、失踪から十年くらいしてようやく真相が明らかになってきました」


 捜索隊の尽力および極北の地に住むイヌイットたちの証言から、彼らの末路は次第に判明していった。


 カナダ極北、キングウィリアム島近海で流氷に閉じ込められ、一年半を費やしている間に。


 身動きを封じられた船内にて、艦長のフランクリンは死亡。


 存命していた残りの隊員たちはついに、船を放棄する決断を下して、流氷の海を歩いてキングウィリアム島へと上陸。


 そこからさらに数百キロ離れた、カナダ本土の交易所を目指していたらしいが、飢えと寒さなどで途中で隊員たちは次々と力尽きたようで。


 誰一人として故郷の地を再び踏むことはなかった。