愛を込めて極北

 「……今までの僕の話を頭に入れた上で、当時の地図をご覧ください」


 再びプロジェクターに地図が映された。


 レーザーポインターが指し示すのはカナダ北部。


 現在は極北諸島と呼ばれる、北極海に浮かぶ島々のある辺り。


 ところが当時の地図では、その当たりは空白地帯。


 「当時は未踏の地であったこの辺りに、太平洋まで抜けられる航行可能な海路があるのではないかと期待されるようになったのです」


 ヨーロッパから海を北上、アメリカ大陸北部を西へと進む航路であるため、このルートは「北西航路(ほくせいこうろ)」と呼ばれた。


 まだ地図のない、まさに未踏の地であった北西航路。


 そのルート確立のために、幾人もの探検家が極北の海へと繰り出して行くことになったのだが……。


 「この辺りは冬はもちろん氷に覆われますし、そればかりか冷夏の場合、夏になっても氷は溶けないことがありました」


 現在に生きる私たちは常識として、この辺りは流氷や氷山などがいっぱいあり、船の航行には危険地帯であることを重々承知しているけれど。


 当時は「極地の夏は白夜のため、気温が上昇し海面は氷結しない」だとか、「氷山は真水でできているので、北極点周辺の海水は凍らない」など間違った知識が横行していたようだ。