愛を込めて極北

 ……一通り今までの自分の話を語り終えてから、自身が惹きつけられてやまないフランクリン探検隊の話を始めた。


 「日本人で初めて南極大陸を探検した、白瀬中尉(しらせちゅうい)って人がいるんですが、幕末に生まれた彼が極地探検に興味を持ったきっかけが、寺子屋でマゼランやコロンブスといった著名な探検家の他、フランクリン探検隊の遭難事件を教わったからなんですよ」


 幕末~明治初期に、遠く離れたイギリスの探検隊遭難のニュースがすでに日本まで伝わっており、寺子屋で教えられていたことには驚かされた。


 「飛行機による移動がメインになる以前は、海を渡るには船を用いるしかありませんでした。しかしスエズ運河やパナマ運河が開通する以前は、ルートはかなり限られていたのです」


 プロジェクターが用いられ、スクリーンに世界地図が映し出された。


 「ヨーロッパからアジアへ向かうのは、南下してアフリカ最南端の喜望峰を回るか、まず大西洋を横断して南アメリカ大陸南端のマゼラン海峡経由で太平洋に出て、それから太平洋を横断するという途方もない船旅、このうちの二者択一だったわけです」


 レーザーポインターで喜望峰とマゼラン海峡の位置が示される。


 世界地図を眺めているだけでも……うんざりするほどの地球の大きさを感じずにはいられなかった。