愛を込めて極北

 「百合……」


 楠木も百合さんに気付き、息を飲んだ。


 「何よその顔。まるでパパラッチに襲撃されたような表情」


 「百合、俺は……」


 「なに?」


 「結婚の話は、なかったことにしてくれ。子供ができたのなら、責任を取って結婚しなければとは思った」


 いきなり楠木は、百合さんに告げた。


 私の目の前で。


 「妊娠は事実ではないのなら、責任を取る必要はないからでしょ?」


 「責任感だけで無理やり結婚しても、俺も百合も心底幸せにはなれない」


 そしてなんと土下座をした。


 「何よみっともない。私が支援する楠木暁のそんな惨めな姿、見たくもない」


 百合さんは嫌悪感を見せる。


 「お前の気持ちが晴れるのなら……。あと今まで甘えていた金銭的援助、時間はかかるかもしれないけどきっと返すし、だから」


 「そんなのどうでもいい。一生解放しない、と私が主張したらどうする?」


 「百合、」


 「目的のために、私と今まで通りの関係を続けるか。無理矢理別れて、その後干されて落ちぶれた人生をその小娘と歩む? それとも……私を殺してでも自由を選ぶ?」