愛を込めて極北

 「一人なら、いつ死んでもいいと思って、旅先での危険なチャレンジすら厭わなかった。極北の地で永久に眠ることができたら、本望だとさえ思っていた。だけど今回は……心底生きて帰りたいと願った」


 「それは、」


 「お前ともう一度、きちんと話をしたかった」


 「……」


 「出発前は百合の妊娠話を俺もお前も信じていて、それに基づいた話しかできなかった。それが間違いだったと分かった以上、別の道も残されているんじゃないかと……」


 「楠木さん」


 「改めて言うけど、お前の存在が俺には必要不可欠なんだ」


 「……考えさせてください」


 そうとしか答えられなかった。


 私の気持ちはともかく、楠木には百合さんが……。


 妊娠話は間違いだったことが分かったけれど、だからといって百合さんの気持ちに変わりはないだろう。


 いくら楠木の気持ちが冷めたとはいっても、スポンサーとしての付き合いは切れない。


 それを断ち切ることは、楠木の活動は永久に再開できなくなる……。


 「お前の気持ちが固まるまで、俺は待ってるから」


 その言葉を背に、ドアを開け、事務所を後にしようとした時。


 「あ……」


 ちょうどドアの外に、百合さんが立っていた。