愛を込めて極北

 「そうだ、お前に真っ先に話そうと思ってたんだけど」


 「何ですか」


 「今回俺が生きて帰ることができたのは、このおかげだ」


 テーブルの上に置かれた箱を、楠木は開いた。


 「……なんですかこれ? 火山灰の固まり?」


 「いや、食べ物だ。味見してみろ」


 「……」


 土のような物質を、恐る恐る口に含む。


 「……チョコレート?」


 味はチョコレートだけど、かなりくどい。


 「いつぞやの支笏湖キャンプで、お前が分量間違って作ったチョコレートを再現してみたんだ」


 「えっ」


 なんて悪趣味な。


 「分量間違えたおかげで、質量のわりに濃厚なチョコレートが形成され、非常食として役立つことに気付いたんだ」


 「それで……大量に再現して、わざわざ極地まで?」


 「だから、今回生還できたのは、大部分がお前のおかげなんだ」


 ゆっくりと私の目を見ながら、楠木は告げる。


 「……今までは、一人が楽だと思っていた。一人のほうがいざという時、誰にも迷惑をかけないし」


 今回みたいに万が一遭難事件とか発生すれば、バッシングが沸き起こるし、被害は家族にも及びかねない。