愛を込めて極北

 「えっ、旭川経由で?」


 響さんから電話があり、楠木が空路旭川経由で帰宅したと聞かされて驚いた。


 家からそう遠くないところに、新千歳空港があるのに……。


 「マスコミが待ち伏せしている可能性があるから、避けたみたい。さすがに旭川空港で待っている人はいないでしょうしね」


 「まだ続いているんですね……」


 電話越しにため息をついてしまう。


 だいぶ前に、海外で誘拐事件に巻き込まれた邦人を「自己責任」だとかで、国中で大バッシングだったのを覚えている。


 望んで被害に遭ったわけでもないのに、まるで悪ふざけをして自らトラブルを招いたように叩かれ、全人生を否定され、家族や友人にも迷惑が及ぶ。


 テレビ越しにひどいとは思ったものの、どこかそれはテレビの向こう、別世界の出来事だった。


 それがまさか、自分の身近で起こってしまうとは……。