愛を込めて極北

 「……もう行方不明になって、五日以上が過ぎているそうだな。残念だけど、生存は厳しいんじゃないか」


 「食料は置き去りにされていて、何も持っていないそうだしな」


 「たとえクマとかに襲われたんじゃないにしても、五日間以上野ざらしは厳しいだろう。夏とはいえ、極地の夜は厳しい」


 未だ白夜が続いているとはいえ、夜間は太陽の高度が下がり、気温も低下する。


 しかもここ数日は悪天候で、空は雲に覆われ雪に似た雨が連日降り注ぎ、北海道の初冬のような気候が続いていた。


 ……その時だった。


 "What?"


 捜索隊員たちは雑談をやめた。


 そして霧の奥を凝視する。


 白い闇の向こうから気配がした。


 何かがいる。


 ホッキョクグマか。


 それとも……。


 すると気配がかげろうのように揺れる。


 "Who?"


 人だ。


 やつれた表情で、こちらに向かって歩いて来る。


 死肉をくわえてさまよう白人ではなさそうだ。


 "Are you the Japanese traeler who became missing?"


 "Yes, I am……"


 捜索隊の問いかけに答えながら。


 楠木はその場に崩れ落ちた。