愛を込めて極北

 「……なんか気温が上がっていたな」


 「ようやく雨も上がり、天候も回復してきたようだけど、気温が上がってきた分、霧が発生している」


 未だ極北では白夜の季節が続いており、日は沈まず夜の闇は訪れないものの。


 蒸発した水蒸気が冷えて霧と化し、辺りは白い闇に覆われていた。


 「依然として空からの捜索は不可能だな。陸路も視界があまりない分、遅々として進まないけど」


 霧が辺りをひんやりと包み込んでいた。


 まるで楠木の消息を、何もかも消し去ってしまうかのように……。


 「……しかし、その日本人旅行家は、衛星電話や緊急用無線機など装備していたそうじゃないか。なぜ連絡が途絶えたんだ」


 「連絡する暇もないような、急な事態に見舞われたんじゃないか」


 「……」


 それから先は、言わずとも通じた。


 急な事故に遭遇したか。


 ホッキョクグマに襲撃されたとか……。