愛を込めて極北

 「死肉を食って飢えを癒したにもかかわらず、結局誰一人として助からなかったんだな」


 「カナダ本土にあった、イギリスの基地目指して歩こうとしたんだろ? 食べ物もろくになく、お粗末な装備で数百キロ歩くなんて不可能なのは、火を見るよりも明らかだ」


 「現代でも、万全の準備で臨んでも命を落とす探検家たちが、山ほどいるからな」


 「フランクリン隊の連中は、死ぬ時どんなことを考えてたんだろうかね。祖国から遠く離れた、こんな荒涼とした地で一人一人、命を落として……」


 「暖かい部屋と食事を夢見ながら、死んでいったんだろうな……」


 死にゆく男たちの運命を想像しながら、二人は首を振る。


 「今みたいに衛星電話でもあれば、助けを呼べたんだけどな」


 「助けを呼ぼうにも当時は、この辺りにはイヌイットが点在していただけだし。どんなに叫んでも誰にも気付かれない。どっちにしても無理だったはず」


 そう結論付けて、カナダ人捜索隊隊員二人は再び歩き始めた。