愛を込めて極北

 「結局ですね、この遭難事故は起こるべくして起こった事故とも言えますね。現地で捜索に携わっている方々に、迷惑もかかるじゃないですか。私はね、こういうのは自己責任原則でお願いしたいと思うんですよ常々」


 自業自得。


 危機管理欠如。


 自己責任。


 つまり、楠木が何らかのトラブルに巻き込まれたのは自分が悪いからであり、わざわざ捜索隊を派遣するべきではないと……?


 「何なんだよこのおっさん。見てきたような面(つら)して」


 テレビを囲んでいたスタッフたちも、最初はあまりの暴言に絶句していたけれど、徐々に怒りが爆発しつつあった。


 「こいつ……、リブラン社の全精力を掛けて……潰す」


 「百合さん!?」


 振り返るとドアにもたれた百合さんがいた。


 非常に顔色が悪い。


 寝起きのせいではなく、心労で相当体調が悪そう。


 「暁のこと何も知らないで、公共の電波で言いたい放題。絶対に潰してやるから!」


 そう言い切った直後。


 百合さんはゆかへと崩れ落ちた。


 かなり具合が悪そうなので、救急車を呼ぶことにした。


 緊急病院に運ばれ、診察の結果、過労により数日間の入院治療が必要とのこと。


 このまま事務所にいてもストレスが大きいので入院してもらい、点滴を打って少しずつ回復に向かっているとのこと。