「私のせいなの……。出発前に暁に、ストレスを与えるようなことばっかりしてしまったから。私があんなことしていなければ……」


 百合さんは自分を責めてばっかりいる。


 楠木の行方不明は、全て自分の責任であると。


 「百合さん、そんなに自分を責めないでください」


 ……そう慰めの言葉を述べて、はっと気づいた。


 私は、そんなこと言ってる場合なのだろうか。


 私に原因はないのだろうか。


 そういえば私も出発直前に、楠木を突き放したり、その際「フランクリンの沈没船に引きずり込まれてしまえ」みたいなことを言い放った。


 (もしかして、私の呪いの言葉通りに……?)


 思えば楠木が行方不明になったのは、フランクリン隊が船を放棄した地点から最も近い海岸付近。


 放棄された船二隻のうち一隻の「テラー」は、いずれ流氷から解放され無人船の状態で南へと漂流し、やがてどこか海岸に漂着したと伝わる。


 もう一隻「エレバス」は損傷が激しく、氷に捕らわれた地点でそのまま沈没したらしい。


 2014年にカナダの捜索チームが、船の放棄地点付近で沈没船を発見し、それがエレバス号であるとほぼ特定されている。


 そして16年にはテラー号らしき沈没船が、キングウィリアム島南西部の、偶然「テラー湾」と名付けられた湾の中で、マストを海上に突き出した状態で……。