愛を込めて極北

 フランクリン隊が遭難した時代とは異なり、通信機器が発達している現在、ベースキャンプに連絡さえ入れられれば、いずれ捜索隊が駆けつけるはず。


 しかし通信機器が全滅してしまったら?


 もしくはクマに襲われるか低体温症で倒れ、通信困難な状況にあったとしたら……?


 通りすがりのイヌイットに偶然助けられるなどといった幸運が起こらない限りは、生還するのは極めて難しくなる。


 そして現地は、依然として悪天候。


 捜索機が着陸のタイミングを見いだせずにいる。


 陸路と海路からも、すでに捜索隊はジョアヘヴンから出発している


 しかし陸路ではもう少し現場に入るまで時間を要し、海路は悪天候と霧に遮られ、上陸できない状態。


 捜索態勢が整わないうちに、時間はどんどん過ぎていってしまう。


 「遭難から72時間が限度だというのに……」


 百合さんが呟いたのが聞こえた。


 72時間、つまり三日間。


 とっくに経過してしまっている。