愛を込めて極北

 悪天候の中、霧や雲の隙間からようやく撮影された画像。


 ぼやけていて鮮明ではないけれど、リュックの引き裂かれた跡ははっきりと確認できた。


 刃物を持った現地のイヌイットが襲ってくるとは考えられないので、あれくらい大きな爪や歯を持つのはシロクマ、すなわちホッキョククマしか考えられない。


 楠木が襲われ、リュックを奪われたのか。


 それとも隙を見てリュックを盗んだのか。


 憶測の域を出ないけれど、何らかの形で楠木のリュックはシロクマに奪われた。


 「暁は……シロクマに襲われたの!?」


 引き裂かれたリュックの拡大画像を目の当たりにして、百合さんの顔色はますます青ざめた。


 「まだ結論付けるのは早すぎます。リュックはクマに奪われても、歩き続けることはできるんですから」


 そう励ましたものの。


 それ以上は続けられなかった。


 旅に必要な物ほとんどが詰め込まれたリュックを失って、荒涼たるキングウィリアム島を歩き続けるのは。


 かのフランクリン隊と、同じ運命をたどるということ。