愛を込めて極北

 「たとえ生き延びても、極北の風雨にさらされ凍傷となり、あの綺麗な指を切断ってことになるかもしれない。いや、生き延びられればまだましなのかも。人知れず極北のどこかに倒れ、誰にも見つからないまま白骨となり……。フランクリン隊の隊員みたいに……」


 百合さんは悪いほうへ悪いほうへと考えを巡らす。


 「百合さん、落ち着きましょう」


 気持ちを静めるには紅茶などいいかと思い、棚の中に紅茶やティーカップを探す。


 「楠木さんは絶対に無事です。今頃きっと、捜索隊に発見されていますよ。だって百合さんや生まれてくる子供を残して、どこかへ行っちゃうわけなんてないじゃないですか」


 「子供……」


 百合さんははっとした表情を見せ、それから再び顔を覆った。


 泣き出したのが分かった。


 「!」


 まさか、子供はだめだったとか?


 安定期に入る前に、ちょっとしたアクシデントで子供が流れてしまうことがたまにある……と耳にする。


 もしかして百合さんも?


 悪いこと言っちゃったかと思い、口をつぐんだ。