愛を込めて極北

 「……まだ詳しいことは分からないし、とりあえず事務所に行ってみんなと相談しましょう。全国から楠木さんの仲間の冒険関係者も駆けつけたみたいだよ」


 全国……。


 「!」


 忘れていた。


 全国の仲間たちが集まってくるということは、彼の奥さんは真っ先に姿を見せていると推測される。


 百合さんは……私を目にしたら即、罵倒するかもしれない。


 「こんなことになったのは、あなたのせいよ!」と。


 楠木の周りをうろついて集中を乱し、こういう結末を招いたのは私だと責任転嫁されるかもしれない。


 「響さん……」


 そういう展開を予測し、途端に私は怖気づいた。


 やはり私は、顔を出さないほうがいいのでは。


 安否を気遣って殺気立っている人たちの感情に、火を注いでしまうことになりそうで……。


 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。内輪揉めするより先に、楠木さんの安否情報を待たなくちゃ」


 それでも百合さんの怒りの矛先がこちらに向けられるのが怖かったけれど、響さんに押し切られて引き返すことなく、楠木の事務所に到着した。


 正面玄関付近にはすでにマスコミが集まりつつあったので、裏口から入ることにした。