「これからも……、活動に邁進してください」


 守るべき存在ができてしまえば、今までのように自由は利かなくなるかもしれないけれど。


 あんなに熱中した極北旅行は、これからも滞りなく続けてほしいと願った。


 そして私は、静かに去っていく……。


 「待て。送っていくから」


 「歩いて帰ります。ここから家まで、歩いてすぐですから」


 待ち合わせ場所を遠くに設定した割には、そこから車で自宅付近の小学校まで移動して話し合いをしていた。


 「でも駐車場に、車置きっぱなしだろ」


 「明日の朝、回収に行くから大丈夫です」


 お酒を飲んで車を置いて帰らざるを得なかったことにして、明日の朝父に駐車場まで連れて行ってもらおうと考えていた。


 「では、次の旅の成功を陰ながら祈ってます」


 今度こそお別れだ。


 「……」


 楠木からは何も反応もなく、追いかけても来なかった。


 現実を思い知らされ、あきらめたのかもしれない。


 そこから我が家までは、徒歩数分程度。


 星空を見上げながら、ゆっくりと家まで歩いた。