愛を込めて極北

 一方的に責められているうちに、なぜか私の心の中で対抗心みたいなものが燃え上がってきた。


 言われっぱなしなのは悔しい。


 まるで私が、二人の平和な生活に迷惑をかけているような責められ方。


 むしろ迷惑を受けているのは、私の方なのに。


 (……奪い取る?)


 先日の楠木の口ぶりからして、百合さんの支配から抜け出して、私と新しい日々を願っているとも受け取れる。


 (だったらお望み通りに、二人の間を引き裂いて差し上げましょうか?)


 そんな言葉が出かかって、あと一歩のところで飲み込む。


 宣戦布告を正式に行なってしまうと、さらにとんでもないことが起きそうな気がするのでさすがに躊躇する。


 その時だった。


 私がためらっている間に、百合さんは予想外のことを口走った。


 「とにかく、暁には次の旅は絶対成功して、凱旋帰国してもらわなければならないの。私のため。リブラン社のため。そして……やがて生まれるこの子のため」


 この子?


 一瞬意味が分からなかったけれど、百合さんがお腹を押さえる仕草を見せたため、全てを察知した。


 「予定日は……たぶん来年」