愛を込めて極北

 「私、別に邪魔になるようなことは」


 「あなたがここに来るようになってから、暁はやたらと自立という言葉を口にするようになったの」


 自立。


 確かに楠木は、金銭面で完全に百合さんの支配下にある現状を恥じており、いつかは自立して活動できるようになりたいと願っていた。


 このままでは一生ヒモ状態だと。


 「暁の活動が認められ、地位が上がり収入が増えるのは、私にとっても喜ばしいことではあるけれど。ただ問題は、成功を収めた途端にやたらと自立心を振りかざし、暴走を始める男が世には多いこと。恩を仇で返すような振る舞いを繰り返したり」


 芸能人のケースでも、たびたび目にする。


 すでにトップレベルの活躍をしている女性が、名もない下積み中の男を配偶者に選ぶケース。


 女性の支えと支援により、やがて男は成功を収めたりもするのだけど……すると途端に豹変し、成功は自分の力によってのみのものだと勘違いし、尊大になり浮気など裏切り行為を働く場合も……。


 「……いずれにしても、暁の暴走が始まったのはあなたと出会ってから。それは事実なの」


 百合さんと私の間に、気まずい空気が漂う。