愛を込めて極北

 「……さっき暁に切り出されたの。私たちの関係を、考え直してほしいって」


 「えっ」


 帰宅直前につかまってしまい、そのまま事務所隣の楠木自宅に移動し、話をすることとなった。


 百合さんは合鍵を所持している。


 楠木は今頃、東京でテレビ番組の収録中。


 スタジオに入る前に百合さんと二人きりで会った際に、今後についての話を楠木のほうから始めたらしい。


 つまり……二人の関係を白紙にしようと。


 「出発前に何もかもはっきりさせておきたいと言ってたけど、それは……」


 収録に入る前に、楠木にそんなことを告白され、百合さんは居ても立ってもいられず、羽田まで急行し飛行機に飛び乗ってここまで来たらしい。


 突然の事態から二時間弱で、もう私の元へ……。


 ということはつまり。


 楠木の白紙撤回要求の理由として……。


 「私、というよりリブラン社からの全ての支援を放棄しても構わないって……。驚きを通り越して呆れるしかない」


 楠木は別れの理由として、百合さんに具体的にどう説明したのかが気になった。