愛を込めて極北

 昔見た映画『タイタニック』を思い出した。


 タイタニック号の悲劇は、フランクリン隊の失踪事件からおよそ70年後の出来事。


 同じ北大西洋を舞台とした悲劇。


 厳密には若干異なるけれど、氷山漂う北大西洋の航海は、『タイタニック』の映画のシーンに似たようなものなのかもしれない。


 未知の大陸へと向かって、大いなる夢を抱いて大西洋を越えて……。


 イングランドからアメリカ大陸まで。


 船首が青い波を鋭くかき分け、大西洋を西へと進んでいくシーンが頭の中に浮かぶ。


 「……なかなか二人きりになることがなくて、なかなか話をできずにいたけれど」


 不意に楠木が話題を変え、私の空想タイムは終わりを告げた。


 「この前のこと……悪かった」


 具体的に、何のことかははっきりと言わないけれど。


 あの一夜の過ちに関してであることは明々白々。