好きだから……あの女との関係がただの政略上のものではなく、そこに欲情と紙一重の愛情が含まれていることを思い知らされ、打ちひしがれているんだ。


 「……」


 訳の分からないうちに、私は涙を流していた。


 男のせいで涙を流すなんていったい何年ぶりか、思い出せないくらいに久しぶり。


 とにかく車のほうへ戻って、家に帰ろうと歩き出した。


 一刻も早くこの場を後にせねば。


 今頃二人はきっと……。


 先ほどレースのカーテンに映し出されていた、二人が激しく求めあうシルエットがまぶたの裏に蘇る。


 思い起こすだけで嫉妬で狂いそう。


 このままじゃおかしくなりそうなので、二人からできるだけ遠ざかろうと急いで帰路についた。