愛を込めて極北

***


 数日後。


 平日にもかかわらず、私は車で事務所を訪れていた。


 「あ、桜坂さん、ありましたよ」


 あらかじめ事務所に電話して、当番の男子大学院生と話をしておいた。


 この前の日曜日、忘れ物をしたので取りに行きたいと。


 当番の男子大学生ともう一人がいるだけで、楠木は留守であると……。


 あの日、副社長の白井百合にあれこれ話しかけられ、集中できなかったのみならず。


 ビデオカメラのバッテリーの入った巾着を、机の上に置き忘れてしまったのだ。


 次の当番日に出向く予定だったけれど、テニスサークルの活動日に遠方からゲストが参加することが決まり、その際サークルの活動風景を撮影することとなった。


 予備のバッテリーなしでは心もとないため、この日仕事が終わってから急遽車で事務所まで取りに行くことにした。


 事前に電話をかけ、巾着の有無を確認する際にどさくさに紛れ、楠木や副社長がいるかどうかも男子大学院生から聞き出した。


 二人とも不在と聞いて一安心。


 そして、副社長も明日の飛行機で東京に戻ると聞いてさらに安心。