愛を込めて極北

 「知らなかったでしょ?」


 「……」


 どこか勝ち誇ったような、副社長の余裕の笑み。


 自分は特別な関係ゆえ、楠木の全てを知り尽くしているという余裕。


 と同時に、彼の過去も何もかも受け入れているという自信。


 さっきのセリフ……どういう意味だろう。


 もしかして、活動資金調達のために体を売っていたとか?


 ……誰に?


 これ以上、聞かないほうがいいような気もする。


 知りすぎるとよからぬ結果になりそう。


 私の中の楠木のイメージが破壊されそう……。


 いや、もうとっくに破壊されているのかもしれない。


 出会った頃は、情熱的に自分の夢を追求する冒険者というイメージを持っていた。


 爽やかに、ひたむきに、自分の夢に向かってどこまでも……。


 それは間違いではないけれど、楠木という人のほんの一部にすぎないことが時が経つにつれて分かってきた。


 私はそのほんの一握りのイメージに一喜一憂している一方で、婚約者である白井副社長は全てを……。