……もしかして。


 あの副社長がまだ、楠木宅に留まっていたりしたら。


 二人の愛の巣である自宅に隣接した事務所に、のこのこ顔を出す形になるのか。


 ドタキャンしたいところだけど、それじゃ逃げたのバレバレっぽいし……。


 「……あの副社長も、フランクリン探検隊の謎に興味があるから、楠木さんをサポートしてるんですか」


 「いや、あの人が関心あるのは、楠木さんだけでしょ。楠木さんが夢中になっているから、それを後押ししているだけ」


 「だったら極地までは、追いかけては行かないんですね」


 「根っからのお嬢様に、極地旅行は無理でしょう。いつぞやはカナダのイエローナイフまではついていったみたいだけど」


 「……そうなんですか」


 「あまりの移動の過酷さで、そこでギブアップしたらしい」


 何回も飛行機乗り継いでイエローナイフまで追いかけたり、今回もこうして北海道まで押しかけたり。


 すごい執念かも。


 楠木は戸惑っているとはいうものの、実際のところ押し切られっぱなしだし……。