愛を込めて極北

 「ホテルはどこ? タクシー手配するから」


 「どこも取ってない。ていうか必要ないし」


 「え?」


 「だって、暁のところに泊まればいいことでしょ?」


 「……」


 副社長は私に聞こえよがしに言い放つ。


 ああ、そういう関係なんだ……と私は内心悟る。


 「では、そろそろ失礼させていただきます」


 頃合いを見計らって、私と響さんは会場を後にした。


 「遅くまでお疲れさま」


 「気をつけて帰ってね」


 事務所の人たちは微妙な表情ではあるけれど、笑顔で挨拶してくれた。


 その向こうから、副社長の余裕の笑みが見える。


 そして楠木は……一度も私のほうを振り向くことはなかった。