アンダルテ ~王女と騎士の物語~



エレナの着せ替え攻防戦に耐え抜いたアデルは、くたくたになりながら自室のベッドへとたどり着いた。
横たわりながらこの後の計画について考える。

今日は、午後からどうしてもやりたいことがあったのだが鬼の形相をしたエレナに捕まり、式や宴で着用するドレスを永遠と試着していたので困っていたのである。予定の時間はとうに過ぎていたが彼女はあきらめていなかった。
絶対に今日でなければならなかったのだ。


幸い、疲れたアデルに気を使ってエレナがいつもより素早く寝支度を済ませ、エレナを含む侍女たちはもう下がっている。


「エレナが次に来るのは、明日の朝。それまでに戻れば大丈夫よ…。」


アデルはベッドを抜け出し、目立たない服に着替えるとそっと自室を抜け出した。


兵士の並ぶ回廊を足早に歩き、人気の少ない廊下に着くと彼女は慎重に周囲を見渡しながら古い土台に置かれた胸像の前へたどり着いた。
長い髪の伏し目な女性の像である。


「まだ、間に合うかしら…?」


アデルは、胸像の裏をのぞき込むと、ごそごそとまさぐった。
一見重たそうな胸像だが、実は裏側にとってがついておりそれを引き出しながら胸像を右に向けると隠し扉が開くという、鍵となっているのだ。隠し扉は胸像の横にある大きな鏡であり、仕掛けを動かすと重厚な鏡と壁の間に人が一人通れるだけの隙間ができる。


アデルはもう一度周囲を確認した後、慣れたように鏡を開くとその裏の隙間へと滑り込んだ。