エレナの言葉に合わせて彼女の後ろから侍女たちが抱えてくるドレスを見て、アデルは思わずげんなりした。
「いったい何時間かかるのかしら…?」
「何時間でもかけますよ。王妃様からもお願いされていますので。」
真面目な表情で答えるエレナに、アデルはじっとりとした目で抗議した。この視線攻撃にもう慣れているエレナは、簡単にあしらいながらてきぱきと作業を進めていく。アデルはため息をついた。
彼女たちがアデルを思って着飾ってくれるのは嬉しいことだが、アデルは自分がどんなに美しくても恋を知っていたとしても、恋愛結婚ができる未来がないことを知っていた。
小さな頃からエルガーべやディストリアへと赴き交流を重ねていた姉に対して、アデルは一度も城の外に出たことがなかった。王や王妃が意図的にアデルを人と会わせないようにしていたのである。
王城外では、アデルは深窓の姫として噂され、美人なのかもしれない、はたまたあまりにも不細工で見せられないのかもしれない、などと色々な憶測が飛び交っているのである。
今回はロゼリアの結婚式ということで、アデルだけ欠席にする訳にもいかず、不本意ではあるがお披露目という形になったのだ。
「私が17になったとしても、結婚できるのかさえ怪しいわね。」
この王家が抱える問題を、アデルは誰よりも理解していた。
姉への寂しさと羨ましさで心がいっぱいになりながらもロゼリアの幸せを願ったのだった。
