アンダルテ ~王女と騎士の物語~


王妃はドレスの裾を軽く持ち上げおもむろに立ち上がると、早く教室にもどりなさい、とアデルに声をかけた。
アデルは不服そうに眉を寄せたが、王妃はその表情も愛おしげに見つめてアデルの額にキスを落とす。
しかし、すぐに王妃の風格を持つきりっとした目つきに切り替えるとアデルに向けて一言放った。


「来週までにエルガーべの歴史を覚えていなければ、ロゼリアの式には参列させませんよ。」


「そんな…!」


踵を返し王宮へと歩みを進める王妃の背中を見つめながらアデルは肩を落とす。


「ああ、そうだわ…!ダンスももう少し上達なさい。あれでは殿方を困惑させてしまうわよ。」



王妃は途中で振り返ると追い打ちをかけるようにアデルにウィンクをしながら付け加えた。アデルは恥ずかしそうに顔を赤らめると、


「…ダンスなんて誰とも踊らないわ…!」



ふふっと揶揄うように笑う母の背中に向かって嘆いたのだった。