「アデル姫、この先が思いやられますな。」
エルガーべ国王がアデルの方を見て、困ったような顔をして言う。
アデルはそれに小さく頷くと、でも…と父の方を見て話し始めた。
「私今日が初めての夜会で、こんなに沢山の方とお会いしたのも初めてで…。もう既にいっぱいいっぱいですの。
お父様がそばにいてくださってとても心強いですわ…!」
「…なんと、愛らしいことか!これは、私も娘が欲しくなってきたぞ。」
少し照れくさそうに顔を赤らめたアデルの微笑みは、まるで時間が止まったかのようにその場の誰もが惚けるほど魅力的だった。
エルガーべ国王はしばらくアデルを見つめていたが、ふと真剣な表情になり、ドモラックへと視線を戻した。
「さて話は変わるが、モルゼ国王と交えて少し話をしたい者がいてな。」
さ、こちらだ、とエルガーべ国王に促されて出てきたのは高齢の男性だった。白髪髭を生やし、皺も多いが、どこか若い頃のたくましさが残った真面目そうな男である。
「誰かと思えば、シャナーダ伯爵ではないか。
随分と久しぶりだな。」
「ああ、ご挨拶が遅れました、国王陛下。
オルレ・シャナーダでございます。
最近はエルガーべ国境の領地にこもりっきりでおりまして…。」
「ああ、夫人のことは聞いておる。辛いことであったな。」
「ありがとうございます…、陛下。
…ときに、本題の方なのですが…。」
