アンダルテ ~王女と騎士の物語~

「今日はとっても暖かいわ。
昨日までの寒さが嘘みたい!こんな日は勉強なんかせずに外に出ないとね。」


城の騒がしさを遠巻きに見つめながら、当の本人のアデルは庭園のベンチに呑気に腰掛けていた。そして近くの樹から降りてきたリスが動きを止めてじっとアデルを見つめていたのでウィンクをして声をかけたのだった。


リスは首をこてんと傾げてまだアデルを見つめている。


「あなたまるで私の声が聞こえてるみたいと思ったけどそんなの夢みたいな話ね。でも童話みたいで素敵じゃない?とっても。」


アデルは体を揺らしながらくすくすと笑った。
耳につけたイヤリングが体に合わせて揺れている。


「それじゃあ、もう一つ聞いてちょうだい。今日は朝から歴史の授業だったのだけれども、ノートンったらまた祖の森の話ばかり…。そんなの城の書庫で読み漁ってるんだから知り尽くしたわ。祖の森についてなら誰よりも詳しいのよ私。」


もう1匹リスが同じ樹から降りてきて元いたリスの横に並ぶ。
アデルはにやっと笑うと口に人差し指をあて声を小さくして話を続けた。


「だから私、ノートンに祖の森についての問題を出したの。彼が知らないようなことについてよ。
当然答えられなかったのだもの、私の代わりに問題を解いてもらわなくちゃ。」


歴史のテストは彼にこそ必要よ。アデルはいたずらな表情をすると口元をほころばせた。