そうであった、とドモラックがアデルの方を振り返り挨拶を促す。アデルは、マナーの授業で教えられた通りに国王の前で挨拶をすると、彼は嬉しそうに「顔をよく見せてくれ」と話しかけた。
言われた通りにアデルが顔を上げるとエルガーべ国王とその周りにいた従者たちからほぅっと声が上がる。
「モルゼ国王夫妻が目に入れても痛くないほど可愛がっていると噂のアデル姫だね。いや、実に美しいな。
春の花のように可憐で、冬の月のような儚さだ。歳はいくつであろうか。」
「15になります。」
「なんと!もう少し歳があれば私の側室にでも迎え入れたのだがな!ハッハッ!」
「ご冗談を、エルガーべ国王。アデルをどこにやるつもりもないぞ。」
「安心せい、ドモラック。わしの妻は1人で充分だ。
それよりも、その過保護な姿勢をどうにかせんとアデル姫にいつか愛想を尽かされるぞ。わしには娘はおらんが…」
不意に真面目な顔つきに戻り、エルガーべ国王はドモラックにいつかは娘に疎ましがられると言う話やアデル姫に嫌われたらどんな気持ちになるかを説き始めた。見る見るうちに険しくなっていくドモラックの様子を見てにやにやしているところを見ると、おそらく揶揄っているだけなのだろう。
