「姫様ー！どこにいらっしゃるのですか！」

「アデル様ー！お返事だけでもしてください！お願いですから…」



暖かな日差しにうとうとと眠りたくなる春の昼下がり。
一方モルゼ国の城内では、第二王女アデルを探す侍女と兵士たちが青ざめた顔で行ったり来たりを繰り返していた。今日は月に二度ある歴史の授業の日なのだが、姫は相変わらずの脱走癖で先生をかわし、侍女が部屋を駆けつけた頃には何故か涙を流しながら姫のテストを解く先生の姿だけがあったのだ。

「申し訳ありません、エレナ…。どうもこうも姫様に言いくるめられてしまって…。」

私では力不足で…。と項垂れる先生を前に姫付きの侍女エレナはため息をこぼす。

「何故あなたが姫様のテストを解いているのよ。しっかりなさい！一体何度脱走されるのですか…。いいえ、先生を責めてもしょうがないわ。王妃様に見つかる前に私たちで姫様を見つけるのよ。」

エレナは、気合いを入れると近くにいた兵士に声をかけた。

「姫様がまた授業から脱走されたわ。今日こそは捕まえるわよ。」

「はっ。」


兵士たちが次々と別の兵士に伝達し、こうして現在城内ではアデルの捜索をする人であたふたしているのである。