でしょ?とかわいらしげに微笑んだアデルを前に、青年は険しい顔を一つも崩さずに続ける。
「なるほど。頭が花まみれということがわかった。」
「ちょっとどういう意味よそれ。…こう見えてもきちんと教養を身に着けた淑女よ。」
「この時間に一人で出歩く淑女がいるか。深夜だぞ。
ましてや、ご令嬢というのは男の急所を狙って脱走を図るなんて野蛮なことは考えないな。」
「どうしてそれを…!?」
見られていたなんて…と顔を真っ青にさせるアデルに、青年は初めてふっと笑みをこぼした。
毛先まで手入れされた髪、質のいい衣類、まっすぐに伸びた姿勢。どれをとっても彼女が上流階級の生まれだと物語っていたが、見た目に反するぶっ飛んだ言動が釣り合わず、とてもちぐはぐでおかしかったのだ。
早く助けに来てくれてたらそんなことしないで済んだのに…!
眉を寄せて怒り出したアデルは、破顔しても美しい青年の顔へ感動とふつふつと湧いてくる怒りの感情の波で何とも言えない表情になる。
「そんな非難がましい目で見るな。これでも目に入ってからすぐに来てやったんだ。」
彼は立ち上がると、アデルに手を差し伸べて彼女も立ち上がらせた。アデルの体からずり落ちそうになったマントも難なく受け止め、迷いなく彼女の肩にかける。
アデルは心の中で「ほら…やっぱり優しい人じゃない」と安心した。
