残されたアデルはしばらく唖然として二人組を見送っていたが、いつのまにか乱れてめくれてしまっていたスカートに気づき慌てて体を起こして正そうとした。しかし、腕が縛られているのでどうにも上手く動くことができない。もぞもぞと不格好にもがくアデルに青年は面倒だと言わんばかりに顔をしかめると、彼はアデルに自分が来ていたマントを被せて後ろに回って縄をほどき始めた。
「…見ないから安心しろ。」
アデルは、驚いて目を見開く。
「どうも、ありがとう。」
だんだん心が落ち着いてきた彼女は、手首が自由になると同時に背後にいた青年を振り返った。
青年の口から出る声は普段城の者たちがもつ温かみなどはないものの、おだやかで心地よさをもっていたため、アデルは直感的に先ほどの男たちよりも信頼していい人だと感じていた。
アデルは、振り返って初めて青年の顔を正面から見た。
彼は驚くほどに端正な顔立ちで、すっと通った鼻筋にやや黄色がかった灰色の目をしている。通りから差し込む月明かりが彼の黒髪を際立たせていた。アデルにマントを渡したため来ているものは薄手の麻でできた衣類のみだったが、鍛えているとわかる体つきや身にまとっている品位が、青年がただの街の住民ではないことを示していた。
「あなた兵士?でも兵士にしては身のこなしが丁寧だったわ。騎士かしら…??」
いきなり後ろを向いたアデルに驚いた様子だった青年だが、アデルの言葉をきいて呆れたように溜息をついた。
「もう少し警戒しろ。俺だってお前に同じことをするかもしれないだろ。」
「あら、そんなことはないわ。マントをかけてくれる人に悪い人はいないわよ。」
