溺愛妖狐ひろいました



そんなことくらい、わかってた。





「お疲れさまでーす」
「お疲れさま」




定時が過ぎ、今日の仕事を終え帰り支度を済ませた。
正直、午後の仕事ちゃんとできていたのか記憶がない。


仕事だから。
そう言い聞かせてなんとか乗り越えたような気がする。




だって、そうだ。
失恋したんだ・・・私・・・。




「親切だろ、俺」




会社の玄関を出たところで声をかけられた。
振り向くとそこには遊佐先輩の姿。




「不毛な片思い、これでやめれてよかったな」

「え・・・?」



どういう、こと・・・?
訳が分からず呆然と立ちすくむ。



自動ドアが開いた玄関からは雨の降り注ぐ音が聞こえた。
ああ、雨は嫌いだ。