それからしばらくして、ミコトがお風呂から上がって出てきた。
人型に変化ができるようになってからは、ズボンの事もあるから出ているのは獣耳だけ。
尻尾は隠してもらっている。
その唯一現れている耳がシュンと垂れ下がっている。
尻尾もだけど、耳でも感情が丸わかりだ。
「ほら、ミコト座って」
「・・・うん」
「髪、ちゃんと乾かせた?」
「うん」
「よかった。はい、ココア」
「ありがとう」
私からココアの入ったカップを受け取ると、手で包み込むようにして握った。
「ミコト」
「・・・ん」
「どうしてベランダに手を縛っていたの?」
「・・・俺。記憶ないって言ったの覚えてる?」
「うん。言ってたね。それと関係があるの?」
覚えているのは、人間への感情だけ。
嫌い、憎い、その思いだけ。
それと自分の名前。
「俺の中には、人間が嫌い憎いって、その感情だけ残ってる。でも、なんでかは覚えてない」
「うん」
「でも、亜子は違う。亜子は、人じゃないおれに親切で、温かくて、優しい」


