「金田先輩はいるのに」

「え?どこ?」

「ほら」



秋穂が指差す方を見ると、金田先輩が遊佐先輩ではない別の人と昼食をとっているのが見えた。
いつも遊佐先輩と一緒ってわけじゃないんだ。



「それにしても、相当重症みたいね」

「え?」

「金田先輩がいる事にも気づかないなんて」

「どういう基準なのよ」




確かに、今までは金田先輩の事を良く目で追ってた。
まるで高校生の恋愛のごとく、遠くから先輩を見ては今日も会えたとこっそりと喜んでいたものだった。

私には金田先輩センサーでもついているんじゃないかってくらいすぐに見つけられる。
それなのに今日は、同じ食堂にいたのに全く気付かなかった。




「少しはふっ切れたってことなのかな」

「・・・そうかな」



そうなのかな。
先輩とお似合いの彼女さんをこの目で見て、叶わないってつくづく思い知らされた。
少しは諦めることができたんだろうか。