仕事に出る準備を済ませ玄関まで向かうと、ミコトも後ろをついて歩く。
見送りはしてくれるつもりなんだ。



「・・・あ、亜子。髪に・・・」

「え・・・」




玄関でパンプスを履こうとしたその時、ミコトの呼び掛ける声に顔をあげた。
私の頭に向かって伸ばされる手が瞬間的に目に映る。



「きゃっ!?」



一瞬、伸びてきた手にあの時のことが蘇りびっくりして悲鳴を上げてミコトの手を振り払ってしまった。
咄嗟だった。

ハッとした時には、ミコトが傷ついた顔で立っていた。




「ご、ごめん。違うの。ボーっとしてて、ごめんね」

「う、ううん・・・。おれが悪いから」




ミコトは首を横に振って応えたけど、傷ついてるのは明らかだ。
私は胸を痛めながら仕事に出かけた。



うまくいかない。
ちゃんと、ちゃんと考えなきゃ。