――人間社会で暮らす条件は、他の人間に絶対にばれないこと。ばれた時には、人間に化けられる力は奪われることになる



共に働けると喜んだ私たちに、白銀が一つ条件を付けてきた。
もし、他の人間に尊の正体がばれたら、連行はされなくとも力を奪われ人間に化けることができなくなるという。

私には尊が見えているし、尊と離れるわけではないけれど、尊が今は喜んでくれている居場所を奪うことは避けたい。
私の側にいたいという理由だとしても、尊の中で少しでも人間への想いが和らいでほしいと思っているから。



尊の過去をきいた今、それがどれだけ難しいかもよくわかってはいるけれど。
過去を思い出してもなお、私を受け入れてくれた尊なら・・・。
そう願ってやまない。




「・・・大丈夫?」

「んー、平気」




そんな尊は、お昼休み仮眠室で妖狐の姿に戻っていた。
長時間人間でいる力はやっぱりなくて、こうして時々戻ってしまう。

それは、尊が神使としての力をなくしてしまったからだという。
白銀のように神使として上位になっていくとその力は強く、この間やって見せたように人間を化かすことも容易い。