「大事だったからこそ、失くしたくなくて心の奥底にしまってたんだよ。忘れてたわけじゃない。失くさないようにしまってたんだよ」

「亜子・・・」

「尊がしたことは、きっと許されないことだよ。無情な世界に憤りを感じることも抗えなかった無力さを嘆くことも仕方なかった。それでも、尊はちゃんとそれと向き合わなきゃいけなかったんだ。逃げちゃだめだったんだよ」

「・・・うん」




それでも、その時の尊の精一杯はそうすることで。
きっと、それほどまでに巴様の事が大切で大事で尊くて。



全てを、捨ててしまえるほど。




ああ、なんて羨ましいのだろう。
そんな事を思ってしまう私は、大概だ。


そこまで尊に想われて。
そこまで尊を想えて。


巴様は、きっと幸せだったんじゃないかな。




「おれ、このまま亜子の側にいたら、きっと自分を許してしまいそうになる・・・。亜子の優しさに、自分の罪からまた逃げたくなるよ」

「だから、白銀と行くの?」

「だって、」

「それでも私は、もう少し尊に側にいてほしい」



なんてわがままな願い。